ベッドを解雇した

ベッドを解雇した。僕の部屋にとって脅威であることに気づいたからだ。ベッドは組み立てた状態では基本的に自分一人では動かせない。僕の部屋に侵略したベッドは親切にもコンセントがついており、本を少し置くようなスペースも用意されている。そんなわけで彼につい本を預けたり携帯の充電器をセットしたりする。ますますベッドの地位は揺るぎないものとなる。

彼は大きく優秀だ。そんなわけで彼に隠れた陰の部分を普段僕は見ることが出来ない。彼はホコリを陰で手懐けはじめた。言うまでもなく、ホコリは部屋にとっての癌だ。僕は定期的に除去に努めたが、少し怠るとその癌は拡大し除去が難しくなる。

奴は大きく優秀だ。しかし僕は奴をこれ以上許すことが出来なくなっていた。奴とその一派を解雇することにした。まずベッドを解体し、腹心であるホコリどもは一掃してやった。部屋にぽっかりと穴が空いた。そこの床にマットレスを直に置いて、布団を敷いた。ああ、はじめからこうしておけば良かったのだ。

一度は仲間であったベッドを解雇してしまったこと、そもそも自分でコントロールしきれないはずであるベッドを招き入れてしまっていたこと。いつもより高くなった天井を眺めながら色々と考えたけど最後には、次は机と椅子を解雇してやろうと思っていた。